2015年7月3日金曜日

世界で広がる同性婚と日本

「世界で広がる同性婚と日本」

<日本経済新聞2015年7月2日朝刊社説欄より転載>

当日の日経新聞は経済には直接関係なさそうなこのニュースを社説でとりあげ、また手際よく、客観的見地から日本社会へのインパクトの意義を解説しています。下手な解説ぬきに全文そのまま転載させていただきます。

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米国の連邦最高裁判所が、同性間の婚姻について合衆国憲法の下の権利であるとの判断を下した。

これにより全米で同性婚が合法となる。すでに英仏などの約20の国が同性婚を法律で認めているが、 米国で合法となった影響は大きい。

米国では以前から、同性愛者など性的少数者の平等を求める運動や、社会生活を支援する仕組みが地道に続いてきた。街なかにNPOが交流施設を設け、国や自治体が資金を援助する例などが知られる。こうした積み重ねで性的少数者の状況について一般の人々の理解も進み、今日に至った。

人の性は多様だ。体の性別。自分をどちらの性と認識しているかという心の性別。服装や言葉遣いなど装いの性別。恋愛相手は異性か同性か両方か。これらの組み合わせで性は多様になる。同性愛もそうした性的な個性の一つだ。

電通の今年の調査では、性的少数者は人口の7.6%。周りに公表しているかどうかは別として、学校の教室や職場、地域にごくふつうにいるということだ。

何らかの少数派に属する人が、差別や偏見により能力や意欲を発揮できないとすれば、本人だけでなく社会や組織にも損失だ。こうした視点から、日本の企業でも性的少数者の不利や不便をなくす取り組みが広がっている。

日本マイクロソフトは性的少数者の社員によるグループを作り、人事部と協力し、働きやすい職場環境の模索や就業規則の見直しに取り組む。経営者や管理職が心得るべきことを専門のNPOなどから学ぶ大手企業も増えている。

同性愛者の「結婚式」を開くホテルやテーマパークも登場した。

東京都渋谷区は同性のカップルに対し、結婚相当の関係と認める証明書を発行する。これで病院での面会や不動産の契約で、同性愛者が不快な思いをする事態が減る。

世界の流れは、性の多様性を社会が認め、組み込む方向にある。

米最高裁判決はその象徴だ。日本も性的少数者がふつうに暮らせる社会に向け議論を加速したい。

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<補足>

日経新聞は6月26日の米連邦最高裁判決の翌27日朝刊一面で、「同性婚、全米で合法」の見出しでワシントン支局発の第一報を世界の動きもふくめて要領よくまとめて報道した。また7面でも「同性婚容認、政権に追い風」と政治への影響もかなりくわしく解説している。さらに同日の夕刊でも同性婚合法化が2016年の大統領選挙にあたえる影響を報じている。

本来なら経済記事が中心になる新聞がこのようにLGBT問題を取り上げるのには、やはり社会全体への影響を考えると決してマイナーな問題ではない、とのマスメディアしての認識があるのではないかと思います。しかも変な色づけをせず、客観的報道に徹しているのがわかります。その意味では日経新聞の報道姿勢には拍手を送りたいです。

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2015年7月1日水曜日

同性婚、日本の現状は?

同性婚、日本の現状は?

同性婚に関しては日本国憲法による大きな障壁があります。 日本国憲法第二十四条は次のように規定しています。

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」

これは戦後のマッカーサー司令官の支配するGHQより提示されたアメリカ政府原案に基づく条文です。

「両性」とは男と女を指すので、同性同士の結婚というのはあり得ないことになります。これは戦争放棄を謳う第九条と同じく、憲法改正なくしては不可能ということと私は理解しています。

これには政治家を巻き込まざるを得ず、大変な努力と時間が必要ですが不可能ではないでしょう。それとも憲法第9条を拡大解釈で迂回して海外派兵も可能にするような絶対多数与党による「バイパス法案」で乗り切りますか?

日本でも大きな第一歩となる動きが出ているようです。2015年3月31日、東京の渋谷区で「事実上の同性婚」を認める条例を区議会で可決したことです。 この条例は男女平等や多様性の尊重をうたった上で「パートナー証明書」を発行し、証明書を提示する同性カップルを夫婦と同様に扱うことを義務づけ、区営住宅への入居や病院での扱いなどで不利な扱いを受けないようにする狙いがあります。

渋谷区議会での条例の採択では出席区議31人のうち保守系の10人が反対したということは、「全員一致」などという社会的合意はまずあり得ないという証明です。しかし完全に支持されないままでも社会的、法的制約から解放されることで同性カップル当事者の生活には物心ともに大きな支えとなることは間違いないので、ここは素直に喜ぶべきだと思います。

この「パートナー証明書」には法的な効力はなく憲法の定める婚姻とは認めらませんが、渋谷区の区長は「国政に対しても人権上の課題として一石を投じ、歴史的な一ページを開いた」と条例の意義を強調したのは立派です。

この渋谷区の採択した条例が同性婚の合法化への第一歩となるのかもしれません。何事も小さな一歩から始まりますから。

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2015年6月30日火曜日

同性婚、ついにアメリカ連邦最高裁でも合法に

同性婚、ついにアメリカ連邦最高裁でも合法に

アメリカ連邦最高裁判所が6月26日ついに同性婚を合法と裁定した。同性婚合法化が世界の流れになりつつある現状をさらに推進する可能性があると見た各国のメディアが報道し、日本経済新聞なども27日朝刊一面でこのニュースを取り上げた。

いろいろな問題をかかえながらもこの自由と人権尊重の国アメリカでは国民の57%が同性婚を支持しており、国民意識を反映した裁定が朗報であるのはまちがいない。同性婚カップルの権利と義務や税法上の特典などが法的に認定されるので、社会生活が一般人同様に保障されるのはたいへん意義のあることだと思います。

なによりも感動的だったのは写真で見たいろいろなカップルとその友人たちの素朴な喜びの表情、多くのカップルがすでに中年や老年に達したカップルであったこと。ここに至るまでの道のりの長さを思うと、彼らの人権と普通人の人権とどこが違っていたか、無理解と偏見のゆがんだレンズが実像をゆがめていたという思いを深くしたしだいです。

同性婚問題は宗教・文化の違いによる偏見、個人の無理解、心情的反発、憎悪、LGBTに対する違和感などは世界中どこでも存在しており、法の力によって簡単に解決する問題ではないことは明らかです。これはアメリカのように憲法や州法で合法と認定しても、個人の頭の中まで変えることはできないからです。個人にも信条の自由は保障されているので、反対するのも自由です。

連邦最高裁での判決が「賛成5、反対4」という僅差での同性婚支持だったことは、州の高裁で同性婚を禁止しているオハイオ、ミシガン、ケンタッキー、テネシー州などでは反対する市民が多いことの裏づけでもあり、今後とも一般市民間ではLGBTへの偏見や差別がつづくことが予測されます。

最近のCNNレポートでも教会の牧師までが同性婚などは絶対認めない、同性の結婚式を要求されたら自分の命をかけてでも拒否する、と声高に宣言していたのが印象に残ります。しかし2004年にマサチューセッツ州ではじめて同性婚が合法化されてから他の州に広がりはじめ、10年後の今では全50州のうち37州で合法化されていたのです。

世界的には2001年のオランダが最初で、ごく最近では2015年5月に伝統的カトリックの国アイルランドが国民投票で合法化を達成しました。北欧のスウェーデンでは合法化は2009年ですが、1944年までは同性愛は刑事罰の対象だったとのことです。同性婚が合法化されたとはいえLGBTに対する偏見がなくなったわけではないことは明確に意識しておく必要があると思います。

同性婚はイスラム教国の現状では絶望的な願望です。しかし東南アジアのイスラム教国マレーシアではSRS後の名前の変更、IDカードの性別変更をめざして当事者たちのねばり強い運動がつづいています。先日の控訴審の判決では却下されたものの、その理由が医師の書類上の不備であり性転換を不法行為としたものではなかったのがまだ将来への可能性を残しています。頭の中の性と身体の性の一致は人間としての尊厳を得るためだけでなく、社会生活上でも欠かせない重要な第一歩だからです。

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同性婚の日本の現状は次回のテーマとして取り上げたいと思います。

2015年6月21日日曜日

同性婚の世界を数字で見ると

同性婚の世界を数字で見ると (CNN – June 13, 2015)

(この記事は2012年5月に最初に発表された内容をベースにして、2015年6月時点で最新情報にアップデートされたCNN記事を日本語訳したものです。)

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アメリカ合衆国最高裁は2013年になると同性婚の支持者に2件の大きな勝利をもたらした。一つ目は伝統的な男女間の結婚を防御するための「結婚法防御法」に定められている権利・権益は、たとえ合法的な結婚であっても同性間の結婚カップルには同様には認めないという法的制約があったが、この規制が部分的ではあるが削除されたこと。二つ目はカリフォルニア州で一時期禁止されていた同性婚が連邦最高裁として再び許可を与えるという裁定をくだしたこと。この裁定以来、同性婚支持者を勇気づけるような出来事がつぎつぎに起こっている。

アメリカ合衆国における同性婚の変化ぶりを数字で追うと以下のようになる。

37州――アメリカで同性婚を認める州の数は以下の37州になった。(アルファベット順)/p アラバマ、アラスカ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、デラウェア、フロリダ、ハワイ、アイダホ、イリノイ、インディアナ、アイオワ、カンザス、メイン、メリーランド、マサチュセッツ、ミネソタ、モンタナ、ネヴァダ、ニューハンプシャ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、ノースカロライナ、オクラホマ、オレゴン、ペンシルバニア、ロードアイランド、サウスカロライナ、ユタ、ヴァーモント、ヴァージニア、ワシントン、ウェストヴァージニア、ウイスコンシン、ワイオミング.

(州ではないが首都ワシントンDCも数字に加えると合計38となる)

(訳者注)アメリカ合衆国は50州より構成されているので、4分の3の州が合法的に認めていることになる。

  (男性カップルはネヴァダ州、下の女性カップルはアラバマ州)

13州――州法、または州憲法により同性婚を否定している州の数は13州ある。

4州――同性婚を禁止している州で、同性婚を認めている合衆国憲法に異論を唱え現時点で法廷係争中の州があり、それはオハイオ、ミシガン、ケンタッキー、テネシー、の4州である。その争点はそれら各州で同性婚禁止を合法と認定した下級審の裁定意見をめぐってである。

1統治領――アメリカの統治領で同性パートナー同士の結婚を認めているのはグアム。

約72%――アメリカ合衆国で同性婚が法的に認められている州で生活する人口のパーセンテージはおよそ72%。(2014年現在のアメリカの総人口は3億1200万)

900万人――アメリカ合衆国の成人(18歳以上)のLGBT人口は約900万人。

251,695――2013年現在のアメリカ人で同性結婚しているカップルの数。 (アメリカ地域人口調査局の調査による)

60%――同性婚を支持するアメリカ人の割合は60%になった。 (2015年5月時点のギャラップ調査による)

2001年――ヨーロッパのオランダが同性婚を合法と認定したのが2001年のこと。これが世界初の前例となった。

2003年――アメリカ連邦最高裁が法的に総称ソドミー(sodomy)と呼ばれる性的行為を刑事罰の対象とするのは憲法違反であると認定したのが2003年。

(訳注)「ソドミー」は広義では男性同士、男女間、また動物を相手にする肛門性交やオーラルセックスを指す用語。

2004年――マサチュセッツ州で同性婚が合法と認められたのが2004年で、アメリカでは最初の州となる。

19カ国――国全域で同性婚が合法と認められた世界の国の数は、以下の19カ国。

オランダ(2001)、ベルギー(2003)、スペイン(2005)、カナダ(2005)、南アフリカ(2006)、ノルウェー(2009)、スウェーデン(2009)、アイスランド(2010)、ポルトガル(2010)、アルゼンチン(2010)、デンマーク(2012)、ブラジル(2013)、フランス(2013)、ニュージーランド(2013)、ウルグアイ(2013)、ルクセンブルグ(2014)、英国(イングランド/ウェールズ2013/スコットランド2014)、フィンランド(2015)、アイルランド2015)。

    (2015年5月に結婚が成立したアイルランドの女性カップル)

2カ国――同性婚が州や地域によっては合法とされている国の数は2カ国で、メキシコとアメリカ合衆国がその例。

4州――アメリカ合衆国のうち同性カップルにシビルユニオン(事実婚)を認めている州は、コロラド、ハワイ、イリノイ、ニュージャージーの4州。

22%――アメリカの同性婚カップルのうち、養子や里子として子供を育てているカップルの割合は22%。(UCLAのウィリアムズ・インスティテュートによる2015年3月の調査から)

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[個人的感想]

ヨーロッパには小国が多く、人口も少ない上に人種や宗教も多種多様ではなく比較的まとまりやすい。北欧にみられたように性の解放も世界に先駆けて起こった歴史がある。一方アメリカは国土も広大で、今や人口も3億2千万人、多人種のるつぼと言われる他民族国家となっている。また、統一された精神文化は存在しないものの、アメリカ建国以来ヨーロッパより持ち込まれたキリスト教が基本となる道徳価値観が国のバックボーンとなっている印象です。

しかし同じキリスト教でも保守派のカトリックと比較的進歩的なプロテスタント派との見解の分かれる分野も多く、LGBT分野についての見解にも大きなへだたりがあります。ただ言論や表現には自由が保障されているアメリカでは、その自由を旗印として偏見に打ち勝ってきたという粘り強い自信があります。その自由の国アメリカでは確実にLGBTの権利が擁護される社会基盤ができつつあると思いますが、その道のりは決して楽なものではなかったようです。テキサス州のように同性婚は命をかけても絶対に阻止するという超保守派の支配する地域もあります。

正しいと思うと強引にでもつき進んで目的を達してしまうのが楽天的なアメリカ人の得意とするところです。アジア諸国ではLGBTは社会的には認知されてきていても、まだ同性婚は表立った話題にはなっていないようです。日本は今どの辺にいるのでしょうか?

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2014年11月21日金曜日

トランスジェンダー勝訴の背景と意味 (マレーシア)

トランスジェンダー勝訴の背景と意味(マレーシア)

先回11月9日の投稿でマレーシアでのトランスジェンダーたちの控訴審に勝訴の判決が下りた記事をお伝えしましたが、この勝訴の意味を一般人や外国人にも分かりやすいようにとの意図で、弁護士の一人を務めたシャーレザン・ジョハン氏の解説がスター紙に載りました。以下はその概要です。(2014年11月12日ネット版The Starより)

マレーシアはイスラム教国家であるため一般国民や官憲のLGBTへの理解はおそらくアジアでも最低のレベルであることを念頭においてお読みください。

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       <判決を喜ぶトランス女性たち>

この控訴審での判決はこの国を揺るがすものだった。ヌグり・スンビラン州のシャリア法刑事法令 第66項は憲法違反として挑戦した3人のトランスジェンダーたちが勝訴したのである。

この控訴審法廷において判事全員一致の見解として下された判断は、シャリア刑事法令第66項は連邦国憲法第5,8,9、10条を犯すものであり、したがってそれらの法令は憲法違反であると断定したのである。

シャリア法令66項とは、ムスリム(イスラム教徒)の男性が女性の服装をしたり、女性として振る舞うのが発見されると法令違反とみなされ、10,000リンギ(=約35万円)または最高6ヶ月の懲役刑、またはその両方、という罰が科せられる規定である。

上訴した3人のトランスジェンダーは肉体的には男性である。しかし、普通の男性とは明らかに違っていて、医学的には「性同一性障害(GID)」と呼ばれる症状をもつ人たちなのである。この症状の人たちは男性として生まれながらも自分は女性であるという感性をもち、女性の服装やメーキャップをして女性として自分を表現し、また女性特有の動作やしぐさを身につけているのである。

この3人は専門家による医学的な根拠となる診断書をそれぞれが3通も提出し、GIDが医学的には「治療不可能」の症状であること、なおかつ一生涯にわたる症状であると診断している。また、上訴した3人は女性としての振る舞いは自分で好んで選んだものではなく、また自分ではどうしようもない症状であると認定している。

上訴された側のヌグリ・スンビラン州政府は法廷に提出された医学的証拠には反論しなかった。

このような症状の3人の当事者は、法令第66項にもとづき州の宗教警察による日常的なハラスメントにあい、逮捕・拘留されたり、起訴されたりした。この法令が存在するために家から一歩出るのもためらうほどで、普通の人間として生活するのが困難な状況に置かれていた。

想像できますか、自分ではどうしようもない医学的な症状のため罰せられることを。

想像できますか、GIDでなくても、なにかの病気のために法的に罰せられることなど。

このような根拠にもとづき、上訴した3人は連邦国憲法に謳われている基本的人権がヌグリ・スンビラン州の法令第66項により侵されていると訴えたのです。具体的には、連邦憲法第5条にもとづく基本的人権、第8条の平等と非差別の保証、第9条の移動の自由、第10条の言論と表現の自由、これらすべての国民に与えられた権利が、州法令第66項を根拠とする官憲により侵犯されているとするものです。

それぞれの州はイスラム教にもとづく法律を制定する権利は有しており、その中には法令66項のようなシャリア刑法が含まれている。しかし、これら州の法律はこの国の最高の法である連邦国憲法に準拠するものでなくてはならない。

合憲であるか否かの判定はイスラム教の定めるシャリア法ではなく、あくまで国の憲法でなければならない、と控訴審の主任判事は言明している。

憲法第3条にはこの連邦国家の宗教はイスラム教であるとの宣言があるが、この条文は憲法に規定する他のすべての条項に優先するものではない。シャリア法で定める条項でも憲法の規定に準拠していなくてはならず、社会的マイノリティとみなされる人々の権利を侵すことはできないのである。

シャリア法令第66項にはGIDに苦しむ当事者は刑法による処罰からは免除するという規定はない。もしあったと仮定すれば、この法令は憲法違反と判定されるのを免れたかもしれないが、この法令にはそのような例外規定がないため、GID当事者の憲法上の権利を侵害するものと判定されたのである。

しかしこの裁定はシャリア法に対する挑戦とみなすべきではない。「シャリア法」という冠をはずしたとしても、その法規の内容の違憲性については同じ判断原則が適用されなければならない。また同様に、一部の人たちが期待するように同性婚にドアを開くものと解すべきではないし、LBGTの権利を認めるものと早合点するのも的を射ていない。

上訴審に訴えてまで法による判断を求めた3人のトランスジェンダーの真意は、官憲によるハラスメントから自由になりたい、自ら望んだわけではないこの症状で、しかも自分ではどうにもできないことに対して刑罰を受けることから解放されて、普通の人間として生きたいという単純で純真な人間的要求からきているのである。

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<付記>

マレーシアにはイスラム教を背景とする宗教警察(通称)と呼ばれる組織は各州に存在し、戦時中の日本の「特高警察」のように有無を言わさず逮捕する権限をもち、しかもその行動には異論を受け付けないという。ゲイやトランス当事者はたえずその存在を意識しながら行動しなければならない、その場で捕まるとなぐる蹴るは当たり前で、頭に瀕死の傷を負わされたトランス女性の写真を見せられたことがある。日本では考えられないような現実がまだマレーシアにはあるのです。

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2014年11月10日月曜日

トランスジェンダー美人コンテスト (タイ)

トランスジェンダー美人コンテスト

(バンコク・ポスト紙11月9日記事より。)

写真中央がミス・ベネズエラ、左がミス・タイランド、右がミス・ラオス

恒例の「ミス・インタナショナル・クイーン」が11月7日夜、タイの海辺のリゾート地パタヤで開催された。このコンテストは「世界最大のトランスセクシュアル・トランスベスタイトのイベント」と自称しているが、今年の栄冠は22歳のベネズエラ代表の頭に輝いた。

18カ国から21人の参加者があり、女王の栄冠を獲得したイザベラ・サンティアゴさんには44万バーツ(約145万円)の賞金が与えられる。また副賞としてスポンサーからいろいろの贈り物があり、希望すれば無料の美容整形手術も選べるという。

タイの参加者ニッシャ・カタホンさんは二位となり150,000バーツ(約49万円)、三位のラオスからのピヤダ・インタボンさんには95,000バーツ(約31万円)が与えられた。

純白のイブニングガウンに身をまとい栄冠を頭に頂いたミス・ベネズエラは、これから何をしたいですかという質問には、笑いながら「ただ眠りたいです」と答えた。

「ステージに上った彼女はエレガントそのもので、審査員全員の賛成で選ばれた」、とメディアのパーソナリティであり学者でもありこのコンテストのジャッジもつとめたスリ・ウォンモンタ氏は言う。

パタヤのトランスジェンダーのステージショーで有名なティファニー・ナイトクラブで毎年開催されるこのビューティコンテストは今回が10回目で、出場希望者は男性として生まれたトランスベスタイトか、または手術前か手術後のトランスセクシュアルでなくてはならない。

他のビューティコンテストとおなじく、「ミス・インタナショナル・クイーン」出場者は出身国の伝統衣装で披露すること、イブニングガウンを着ること、また水着姿でパレードに参加することがきまりとなっている。

ミス・アメリカのサミラ・シタラさんは、コンテストへの参加は夢だったのでとてもうれしい。友人のすすめで決心したこのコンテストが初めて公然とカムアウトする場になった意義も大きい、と興奮した面持ちで語る。

「わたし気がついたの、これが人生というもので、自分の過去からは逃げられない。もう隠すことはできないから、これでよかったと思う。」

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(独り言)世界にはこんなトランス美人がいるんですね。余計ながら、副賞の美容整形などは必要とされないと思いますが、、、。

2014年11月9日日曜日

クロスドレシングの刑法罰は憲法違反の判決(マレーシア)

クロスドレシングの刑法罰は憲法違反の判決(マレーシア)

今年の7月まで6ヶ月にわたって日本に滞在し、トランスジェンダーに関するフィールドワークに関わっていたマレーシアのTG女性のシェコさんからの事前予告のとおり、11月7日に控訴審法廷でクロスドレシングを刑法で罰するのは個人の表現の自由を不当に束縛するものであるとの判決が下された。これはイスラムの国マレーシアのトランスジェンダーにとっては画期的な判決であるので紹介いたします。(2014年11月8日掲載、The Star紙より)

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     写真:喜びのTS関係者(左端が日本にもきたシェコさん)

3人の裁判官で構成されるパネルは3人のトラスジェンダーの控訴を認め、ヌグリ・スンビラン州のシャリア刑法(1992年制定)の第66条は連邦憲法の条文に抵触するものと次のように裁定した。

「個人の服装、身につける装飾品などは自己表現のひとつの形であり、憲法10条の表現の自由で保障されていると当法廷は解釈する。」

現行のシャリア法第66項では女性の服装をして女性としてふるまう者は、本人が性同一性障害(GID)であるかどうかに関わらず6ヶ月の懲役刑か最高1,000リンギ(約33000円)の罰金が課せられる。

「三人の上告人や同じようにGIDに悩む当事者に課せられた制約は、明らかに不当であると言わざるを得ない。したがい、理性的観点からシャリア法第66項は憲法違反と裁定する。」

三人の判事により構成される審議の結果は、GIDは精神セラピーや薬物投与では変更できない精神の様態であり、それに悩む個人に生まれながら備わっている症状である」との一致した見解による。

「シャリア法66項により当事者たちは自分にとって自然な服装をしたいのに出来ない、また逮捕、拘留、起訴の可能性もある。このような制約は当事者の品格を卑しめるものであり、抑圧的であり、非人間的である」、と主任判事のモハマッド・ヒシャムディンは陳述している。

主任判事はまたシャリア法はHIVの拡大につながる同性愛から社会を守るためにも道理にかなっている、とのセレンバン州の高等裁判所の判断には賛同せず、「高裁の見解は事実や確たる証拠にもとづくものではなく、非科学的な個人的感情、または個人的偏見が混在したものである」と述べた。

トランスジェンダー上告代表者の弁護士であるアストン・パイヴァ氏は、「クロスドレッサーたちは今後も逮捕される可能性はのこるが、これからは高等裁判所で堂々と抗告できる権限を得たことに大きな意味がある」と報道陣に語った。

「女性に正義を」運動の主唱者であるニシャ・アユブは、今回の判決をもとに国中のトランスジェンダーたちに教育の機会をもうけ、それぞれの州にある同様の権利抑制の法律にチャレンジするよう呼びかけると言う。

2011年2月2日に別の3人のトランスジェンダーが憲法違反を理由に、同じシャリア法による逮捕と起訴を禁止するよう法律解釈の見直しを求めていた。2012年10月11日に出されたセレンバン州の高裁はこの訴えを却下し、原告が男として生まれ、ムスリム(イスラム教徒)であることを根拠として、憲法に定める原告の権利は無視されるべきであるという判定であった。

今回の控訴審の判断に「独立ジャーナリズム・センター」のソニア・ランダワとジャック・キーは、「この裁定は連邦憲法がこの国の最高の法体系であることを再認識させるものである」と拍手をおくった。

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